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【講演・セミナー】人事・労務担当者セミナー

当事務所の代表である牛見和博(弁護士・中小企業診断士・ファイナンシャルプランナー)が、株式会社人事情報システム主催の人事・労務担当者セミナーにおいて、講師を担当いたしました。

 

日時:平成26年6月17日(火)午後2時30分~午後3時30分

※セミナーは午前10時~午後4時まであり、その一部です。

場所:山口商工会議所5Fコミュニティホール

テーマ:「労務トラブルの対処方法」労務トラブルの最前線:未払い残業代請求問題への対応

対象:企業・団体の人事・労務担当者

 

なお、当日使用したレジュメは以下の通りです。

 

1 未払い残業代請求問題とは

平成24年度「監督指導による賃金不払残業の是正結果」(厚生労働省)

 

2 未払い残業代のリスク

① 過去2年分の残業代が請求される

② 遅延損害金(各支払日から6%,退職日から14.6%)が請求される

③ 付加金(最大で残業代と同額のペナルティ)が請求される

④ 同種請求の頻発

⑤ 悪質な場合,刑事罰(6か月以下の懲役,30万円以下の罰金)が課されることもある

 

3 未払い残業代が発生するパターン

⑴ 残業代はつかないと説明している,上限・下限を設定している

法律で割増賃金を支払わなければならない場合が定められており,勝手に変更できない。

ア 1日8時間,1週間40時間を超えて,時間外に労働をさせた場合

イ 深夜(午後10時~午前5時)に労働をさせた場合

ウ 法定休日に労働をさせた場合(1週間に1日も休日を与えない場合,あるいは,4週間を通じて4日以上の休日を与えない場合)

※ 会社の指揮命令下に置かれている時間は,全て「労働」となる。

 

⑵ 始業時間と終業時間の端数を30分単位で切り捨てている

→ 残業時間は1分単位で計算しなければならない。

特別な事情がなければ,タイムカードの打刻の通りに認定される。

 

⑶ 残業代の計算基礎が間違っている

→ 以下の残業代の計算基礎に含めなくてよい手当以外の手当を計算基礎から外している。

①家族手当,②通勤手当,③別居手当,④子女教育手当,⑤住宅手当,⑥臨時に支払われた賃金(結婚祝金,見舞金等),⑦1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)

 

⑷ タイムカードを使っておらず,会社と従業員の認識がずれている

→ 業務日誌,労働者の手帳などのメモや,同僚の証言などから認定される。

 

⑸ 残業命令を出していない

 残業命令は黙示的なものでもいいと解釈されているため,残業命令を出していなくても残業代の支払義務が生じる。

 

⑹ 管理職に残業代を支払っていない

→ 管理職であっても,深夜(午後10時~午前5時)の割増賃金は支払義務がある。

→ 法律では「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)には残業代を支払わなくてもいいとなっているが,管理監督者と認められる事例は極めて少ない。

 

⑺ 残業代込みの賃金にしている,残業代の代わりに役職手当を支払っている

→ 基本給あるいは役職手当に残業手当が何時間分含まれているか明示する必要がある。

※明示していない場合,役職手当も含めた金額で残業代を計算しなければならない。

 

⑻ 事業場外のみなし労働時間制を採用している

→ 日報や携帯電話により労働時間の管理が可能と言われ,適用が認められない場合がある。

 

4 事前の対策

⑴ 労働時間管理簿を作成する

→ 各従業員に始業時刻,終業時刻をエクセルシートに記載したものを提出させ,それを上司がチェックし修正し,各従業員に確認させる(署名・押印させる)。

 

⑵ 残業時間の端数切捨てを行わない

 → 1か月合計では30分未満を切り捨てることは認められている。

 

⑶ 残業を許可制にし,残業許可の申請書を出させる

 就業規則に残業は許可制であると明記し,事前に残業許可の申請書も出させる。

→ 勝手に残業をしている従業員がいれば,半強制的に帰らせるということも必要。

 

⑷ 変形労働時間制を採用する  

→ 1年単位や1ヶ月単位の変形労働時間制,フレックスタイム制などがある。 

 

⑸ 管理監督者として認められるように運用する

 

⑹ 基本給あるいは役職手当に残業手当が何時間分含まれているか明示する

→ 基本給を引き下げる場合には,従業員の同意が必要となる。

 

⑺ 労働時間を減らす

①残業の事前申請

②ノー残業デー

③労働時間管理が評価される人事制度

④社内業務の改善

 

5 事後の対策

 

6 まとめ